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犯罪のリアル、性のしくじり体験……顔を出さないVTuberでしか語れない知っておくべき話の数々「懲役太郎」「花魁由宇霧」

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なにかの意見や情報を伝える際、YouTubeの動画は非常に強力なツールだ。現在も教育的内容の動画は多数あがっている。
ただ動画は、文章よりも視覚的に強い刺激を与えやすい。大人ならともかく、若い人に伝えたいのに、過激すぎて見せられないのでは意味がない。

そこで有効なのがVTuber・バーチャルYouTuberの形式だ。話すのは2Dイラストや3DCGのアバターで、実写の人間ではない。アニメーションと会話しているかのような感覚で見られる。ディズニーの「タートルトーク」の雰囲気が近いだろう。
今回はこの形式を利用し、一般的には過激な知識を、ソフトに伝える点で成功を収めている2人、懲役太郎花魁由宇霧を紹介したい。

犯罪者や刑罰の真実を語る・懲役太郎

懲役太郎は、額に怪我の残るいかつい顔をした囚人の姿をしたVTuberだ。前科三犯、刑務所から出られる様子は全くなし。ヤのつくお仕事だったらしい。
彼は犯罪者・囚人の事実を赤裸々に語る活動を続けている。

 
例えば「【事件解説】死体は山には埋められない、その理由」では、ドラマなどで死体を埋めるシーンの間違いについて語る。今まであまり語られなかった内容に多くの人が驚かされ、この話題は大手YouTuberの間やTwitterで一気にバズった。知っている人には当たり前かもしれないこの情報を、多くの人が知らない・知る機会がなかったという事実が露呈された。

 
ネットニュースからの派生で、Twitter中に「タピオカ屋はヤクザがやっている」という話題が広まり、「買ったらだめなんじゃないか」という風潮が広まったことがあった。それについても中立的視点を保って懲役太郎は語る。そもそもヤクザ云々抜きにしてきちんと営業許可を取って頑張っているなら、それはきちんとした商売だ。「ヤクザのしのぎ」が問題になるのはどこなのかを、論理立てて語る。噂で不安になっていた人は、是非知識として見てほしい。

その他にも、刑務所の宗教についてや、指を詰めることは可能なのか刑務所ならではの喧嘩テクニックなど、一般市民として生きていたらまず知る機会がないであろう、でも間違いなく世界に実在しているはずの話題がどんどん出てくる。

もし懲役太郎の魂(アクター・演者)が、顔を出して囚人体験や犯罪知識を語ったら、世の中からは批判が集中するだろう。経験者だったら「犯罪者」としてのレッテルを貼られるし、関係ない人間だとしたら信用度は落ちてしまう。

懲役や刑罰、犯罪のリアルについて「知る」ことは、とても重要なことだ。社会に起きている見えない仕組みを知ることで、犯罪を抑制する効果は確実にある。でもこれらは学校で習う機会がない。刑務所内の生活について語っていけないという法律はないが、そもそも誰も知らない。偏見とデマが独り歩きしがちだ。

だからこそ、「懲役太郎」というアバターが功を奏している。二次元のアニメ風キャラクターが、囚人らしさ全開で語っている様子は、それだけで面白い。懲役太郎は囚人なので、面会室でしか話すことが出来ない。時間制限タイマーがあり、「面会時間終了!」の幕が下りたら会話は打ち切り。演出がコミカルだ。

見せるバランスの上手さについては、ホリエモンこと堀江貴文氏が「頭いいな」と絶賛していた。堀江貴文氏も懲役経験者。「頭いいけどこれガチで前科3犯ですね」とまで言っている。自分が囚人として知っている話ばっかりだったとのことで、懲役太郎の語りが事実だと太鼓判を押す。本人の前科についてはわからないけれども、信憑性はグッと上がった。

(3分30秒くらいから)

懲役太郎は犯罪を勧めたいわけでも、闇社会への好奇心を満たしたいわけでもない。かといって「正義」や「善」を説いて回ることもしない。世の中にある様々な犯罪行為、実際に受ける懲罰等を、自らがしくじって体験した話や、同じ房の人から聞いた話から、事実として述べている。世の中で起こる事件についても、自分が知る犯罪の実情と照らし合わせて語る。彼のチャンネルは、善悪論で割り切れない出来事について、まずは「知る」よう働きかけている。

関係ない人のいない「性」の問題・花魁由宇霧

由宇霧は、凛とした花魁の姿をした、性教育VTuber。

由宇霧は、子供のうちから少しでも多くの人に、性について少しでも知ってもらいたい、防衛してもらいたい、という強い信念を持っている。医学的知識から自分の体験談まで、何もかもを隠さず語る。初めての性体験や、快感の仕組み、自慰グッズ、性交の方法、性病や妊娠の不安、性器の違いのコンプレックス、性癖の悩みなど、様々な話題が取り上げられる。

 
しくじり体験として、性病検査をした自らの話を語ることも。意外と知らない人が多い話だ。「らしいよ」じゃなくて、自分が経験して恐怖した話なので、生々しさが段違い。実体験を言うのは勇気がいることだが、知っていると知らないでは大違いの重要な話だ。

 

 
彼女はバーチャルな花魁であると同時に、キャバクラや風俗職経験もあるとのこと。性風俗をどう安全に楽しむかの部分については、かなり肯定的だ。性は存分に楽しんでほしい、自らの身体を愛してほしい、というスタイル。それを満喫するためにはしっかりした知識が必要だから、多様な角度から性のあり方に切り込んでいく。

由宇霧は、性的なコンプレックスを取り除くための活動をしているVTuberだ。童貞や処女の劣等感、性器の形状、性癖など、本人にとっては精神的に苦しい話は、なかなか友人や家族には聞きづらい。これらをすべて論理的かつポジティブに受け止める。そのため視聴者からの性の悩み相談が、男女問わず殺到。性の悩みの駆け込み寺になっている。彼女が「花魁」という知的なビジュアルなのは大きい。

新書「未来のセックス年表 2019-2050」で由宇霧が取り上げられている。彼女はインタビューの中で、「#MeToo」運動の話を挙げている。その際、性被害にあって顔出しで告発した女性が、好機の目に晒された上に「襲われるだけの魅了があるって思われたいんでしょ?」というセカンドレイプに遭ったそうだ。

他人の性・エロを受け入れがたい状況があるからこそ、由宇霧はバーチャルの姿を取った。性を語る時、「じゃあ自分は?」という視聴者の視線は必ず出てくる。自己の体験談を話した時、実写だとその人の性体験を想像し、拒絶反応が出てしまうことはどうしてもある。

VTuberというアバターをかぶることで、由宇霧は臆すこと無く語る。自慰グッズや生理用品も、実際に使ってレビューする。常に真剣なので下ネタ感は一切ない。由宇霧自身わからないことは医者に聞きに行って正しい知識を仕入れるほどに熱心だ。

YouTubeは性的なコンテンツが弾かれがちだ(それが教育的であっても)。回避策として男性器を「ご子息」、女性器を「花園」などのように言い換えている。結果、全体的にトークがソフトになっているのは、性に抵抗がある人でも聞きやすい。新規の人が受け入れやすくなるよう、常に最善のバランスの表現が模索され続けている。

性と犯罪

懲役太郎と由宇霧は何度かコラボをしている。性犯罪についての話を、性的問題と犯罪的側面から、事実を語る。

 

 
強制性交やDVのような犯罪にあたる話を、犯罪者側の視点から「何を考えて行っているのか」懲役太郎が語る。合意なきセックスから起きる性的なトラブルについて由宇霧が語る。オーラルセックスなどについての事実を、男性視点と女性視点で語る。特に後編の犯罪の話は、事実として受け入れがたいような内容も。自分は無関係、なんてことはないのだ。

由宇霧はコラボの際、面会をしにきたという形式で訪れる。短い時間の中だからこそ、語りのうまい2人のトークはものすごく濃密だ。

9月14日には、懲役太郎・由宇霧の「昼からアウトロー」というトークイベントが行われるそうだ。またこの後には「懲役太郎独演会inエンタス」というイベントも準備されている。

どのようなイベントになるかは現時点ではわからないが、ここでしか聞けない、ネットには載せられないような貴重な話も飛び出しそうだ。

たまごまご

オタク系・サブカル系ライター。ねとらぼ、エキレビ!、MoguraVR、コンプティーク、Vティークなどで、マンガ・アニメとVTuberの記事をメインに執筆中。女の子が殴り合うマンガが好きです。

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