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ストーリーと執着心。インタビューで見えてきた「ひらくPCバッグ」が売れ続ける理由

私は、深刻なバッグ難民です。

普段持ち歩いているバックパックは軽くて負担は少ないのですが、収納力に乏しく、中身がごちゃごちゃになり易く、あまり使いやすいものではありません。一方でガジェット類をたくさん持ち運べる大収納バッグも使用していますが、必要以上に大きくて取り回しに苦労します。

軽く、使いやすくて、大容量で、効率よく使える。

そんなバッグやバックパックを探していますが、いまだ理想形には出会えていないません。そんな中、「良いですよ」という評判を聞いたのが今回のひらくPCバッグでした。

■SUPER CLASSIC「ひらくPCバッグ」
https://superclassic.jp/?pid=41001

 

使えば使うほど魅力に気づく。「ひらくPCバッグ」レビュー

1:まるでペン立てのように立つ!

ひらくPCバッグ最大の特徴が、立つPCバッグだということです。PC入れてもちゃんと立つの? ほんとに? と疑問に思うかもしれませんが、すごく安定して立ちます。こうして、ペン立てのようにデスクに置いて、開いて使えば必要なものをストレスなく取り出せます。

打ち合わせなどで外出する時、最寄りの喫茶店に入ることもありますが、そうした時にこのバッグならガバっと開けて、必要なものをサッと取り出せる。省スペースでも効率的にツールの展開と収納ができる、まさに移動するペン立てです。

2:メインのPCポケットは大きめノートでもOK

PCポケットには蓋などはなく、スルッと入るタイプ。12インチMacBookだとスカスカくらいの幅広さがあります。サイズとしては旧MacBook Pro 15インチまでが入る広さに設計されているため、外出先でも作業したいと考えている人が選ぶノートPCであれば、およそ問題なく収納できるはずです。

3:小分けにされたポケットと効率的な収納

 
ガバっとひらくと内部はポケットが小分けになっています。これらは何を入れるのだろう? といった疑問も浮かびますが、毎日モノを詰め込むうちに、自然と定位置が決まってきます。特に右側のポケットは、モバイルバッテリー入れとしてベストなサイズです。

外側はパンチングレザー。中に入れているものが見えるのがまた便利で、スマホや名刺入れ、メモ帳など、すぐに取り出す必要があるものはもっぱらここが定位置になりました。

また、内部からコードを出すことができるんです。取り出しやすい場所にスマホを入れられて、充電もできるという構造。これにはヤられました。夕方になるとどうしてもバッテリー不足に悩む私にとって、このパンチングレザーのポケットはスマホのオアシスとなっています。

開いたときに手前にくるポケットも、片方はメッシュ。USBメモリやSDカード、その他細々としたものを入れておくのにピッタリ。もう片方のポケットは中身が見えないので、パスポートや手帳など、外から見られたくないものを入れておくといいかもしれません。私の場合はポケットティッシュや、旅行時に使うひげ剃り、常備薬など、生活臭があるものを入れています。

4:ガジェットのトレンドに合わせて「かわる」

底部の仕切りの位置は自由に変更できます。普段はフルサイズのカメラを入れていますが、今日は軽めに動きたいなぁという時は、カメラをコンパクトサイズのミラーレスへ切り替えて、お気に入りのヘッドホンとミネラルウォーターを入れて。フットワーク軽めな装備に。

こうして、スタイルに合わせてレイアウトを変化できるのも便利です。その次代のトレンドによっても、気分によってもカバンの中に収納するガジェットは変わってきますし、この可変力は理にかなっていて使いやすいポイントです。

どこでも、ガジェットと一緒。これは持ち運べるガジェット置き場

「ひらくPCバッグ」はPCバッグなのに、フルサイズカメラが入って、交換用レンズが入って、スピードライトが入って、タブレットまで入って、当然PCまで入って。それでいて、まだ空間には余裕があるというおばけのような収納力。これは想像している以上のものでした。

また、どこに何を入れてほしいのか? 何度もモノを入れているうちに自然とその最適解が理解できてくるのです。すると、なるほど収納しやすくて、抜群に取り出しやすいので、常にデスクにバッグを置いて、必要なものはすべてこの中に入れています。そして出かけるたびにそのまま持っていく。というスタイルも多くなり、まさに狙い所に見事にハマったような気がします。

そう考えると、本当によく考えられたデザイン・レイアウト・機能で、私のようにさまざまなガジェットをカバンに詰め込む方のために作られたようなツールだと関心するばかり。発売からかなり経っているにもかかわらず、未だ注目されている理由も納得です。

代表取締役インタビュー:ひらくPCバッグはなぜ売れ続けているのか?

では、このロングヒットの理由はどこにあるのでしょうか? 今回は「ひらくPCバッグ」を開発・販売しているバリューイノベーション株式会社の代表取締役「南 和繁」さんに、「ひらくPCバッグ」がなぜ売れたのか? そしてなぜ売れ続けているのか? というところをお伺いしました。そこには、他のバッグにはない斬新な発想と、物づくりへ姿勢があったのです。

欲望のままに。ひらPが「売れた」哲学とは?

――2012年の販売開始から約6年。しかし現在もなお注目されているバッグだと思います。こうした長期間売れるバッグはどうやって生まれたのでしょうか? 南さんの考える物づくりへの姿勢を教えてください。

うちの商品はいつもそうなのですが、世の中にすでにあるものを作るのは面白くないなという思いはあります。

過去の商品例となりますが、10年くらい前にこの会社を作った当時に作ったのが「薄い財布」という商品と「薄いメモ帳」と「薄い名刺入れ」というものでした。

僕は2009年までベンチャーキャピタリストで、こうした物づくりは初めてだったのですが、これらは、僕の欲しい!と思うものを欲望のままに作ったんです。

――欲望から生まれたプロダクトなのですね。これは「ひらくPCバッグ」でもそうですか?

そうですね。うちの会社のやり方って作り方が違うんだな。と思っています。ひらくPCバッグ商品に関してはブロガーの「いしたにまさきさん(Twitter)」の企画なのですが、いしたにさんはカメラが好きで、カメラバッグもすごい好きなんです。でも、なかなか理想のカメラバッグに出会えないけれど、いつか欲しいと思っている。

だったら、そういう熱意のある人がバッグを作ったら、面白いものができるんじゃないかな?と思ったのがきっかけです。いしたにさんにはアイデアを出してもらって、僕らがメーカーの立場を担って、バッグ作りを一緒にやろう!といって始めたのが「SUPER CONSUMER(スーパーコンシューマー)」というメディアなんです。

■SUPER CONSUMER
http://srcr.jp

メーカーがメディアで情報を発信することでストーリーが伝わる

――プロダクト作りと同時にメディアをスタートした理由はなんでしょう?

SUPER CONSUMERの役割は「ストーリー」です。

メディアとして販売するプロダクトの制作プロセスを掲載していて、商品として「できた!」というところまでの、ストーリーがわかるようになっています。もし、その商品が気になっている人がいたら、発売までずっと情報を追っていけて、過程を知れて、納得して購入できる。こうしたストーリー仕立ての売り方っていうのも、面白いと思ったんです

また、僕らは欲望のままに作っているので、お客様から「もっとこうした方がいいんじゃない?」というご意見を頂くこともあります。しかし「実ははそれはもうやった!」「やったけどこういう問題があった!」というのがたくさんあって、既に試し終わったサンプルもあったりするんです。

こうした事情があって、制作のストーリーを書いていったら、商品が気になってチェックした方へもよりわかりやすく伝わると思ったんですよね。サイトを見ていただくことで、ポケットに関する意外な使い方や、困っていたことが実は解決できるという気付きになると思うのです。

これは執着心。変わらない、理想のバッグ

――6年間という長い期間、支持されるにはどんな理由があるのでしょうか?

まず、自分が納得する商品になるまで世に出しません。あと、うちの会社の商品ってモデルチェンジしません。廃盤もしません。僕たちがあとになって後悔したくないんです。もうちょっとこれすればよかったなとか、そういう後悔を残したくないんですね。

――これが究極系だという理念があって作り続けているんですね。

はい。ひらくPCバッグなども、最後の最後まで本当に微調整を詰めていて、もう執着心ですよね。でも最後までやりきるので、後で後悔しない。後悔しないためにやりきる。ということを大事にしています。あと、うちの商品っていうのはターゲットってのは無いんです。

ターゲットという考え方を使うと、他の会社の商品企画と同じになってしまいます。僕たちは僕たちの欲望のままに商品を作るということをしているので、ターゲットは考えていません。逆にそれをやっちゃダメだ!という考えですね。

さすがに10年もやるとこうやったほうが売れるな……。といったのも思い付いたりするんですが、でも自分が本当に欲しいかどうか。ってのが大事です。素材選びも、大きさも、ポケットのありなしも。自分が第一。

みんなが欲しい欲しい!という集合知でものを作っていくと、それらの舞台になって価格競争とかに巻き込まれてしまいます。だからいつも、100人中の5人くらいが「めっちゃいいな!」と思う商品であればいいなと思って作っています。それが僕たちがうまく行っている理由だと思うんです。

10年後のCLASSICへ

――バッグと聞くと、一般的にはファッション的なリニューアルを重ねて新作感を出すというイメージがあります。そういった展開はしないのですね。

そうです。ファッションという言葉を意識していなくて、その真逆に行こう。という考えがあります。まさに、ECサイトの名前ってSUPER CLASSIC(スーパークラシック)なのですが、クラッシックって日本では「古い」っていう意味が一般的ですが、本当の意味では「定番」といった意味合いなんですよね。定番を作るという意味を込めてECサイトの名前を「SUPER CLASSIC」という名前にしました。

僕たちは、奇をてらった商品を作るのではなく、定番の商品を作りたいんです。

今でこそ「ひらくPCバッグ」のように、ガバっとひらくバッグも増えていますが、当時から目指していたのはトレンドに合わせて変わるファッションと真逆のアプローチ。10年後の定番を作りたい。という思いがあったのです。

熱量と理想が形となったガジェットファンのためのバッグ

自分が欲しいものを目指し、発表し、作り、売り、共感を形にする。発売から6年経ちながらも、作り手の価値観、欲望、そして愚直なまでの追求。こうした商品への熱量が、使いやすさへと昇華しているからこそ、「ひらくPCバッグ」を求める人が今も絶えないのでしょう。

10年後の定番(CLASSIC)へ。

必要なものをすべて入れて、どこでも自分のデスクになる。そんな「ひらくPCバッグ」は今も、そして10年後の未来でも。PCやカメラ、ガジェットなど多くのモノを持ち歩くユーザーにとって、1つのアンサーとなるはずです。

小暮ひさのり

PC誌やWEB媒体を中心にデジタルアイテムのトレンドを追いつつ、趣味の農業を楽しんでいる「電農派」テクニカルライター。特技はお掃除。特に水回り系のお掃除が得意。

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