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加速度的に普及するビデオオンデマンドサービスと、夢にまで見た「外出先で動画を観る生活」

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Amazonプライムビデオ、Netflix、Hulu、その他諸々・・・。今やビデオオンデマンドサービスは、当たり前のように我々の生活に根付いている。しかしほんの十数年前までは、「外出先で映像を観る」「どんなデバイスからでも映像鑑賞ができる」という行為は、実にハードルの高いものであった。
私も、今でこそ前述のサービスに加入して豊かな動画鑑賞ライフを送っているが、時にふと、不思議な感覚に襲われることがある。「それ以前」は、一体どのような生活を送ってきただろうか、と。

アニメを録音していたあの頃

中学の頃、大好きな漫画のアニメ化が発表された。「アニメ化決定!」の報を雑誌で知った際は、思わず叫んだものである。しかし、地方住まいの私には、まず「住んでいる地域で放送されるのか」というハードルが待ち受けていた。今でこそ、インターネット環境と動画配信サービスの合わせ技で、アニメ放送の地域格差はかなりのレベルで解消されたが、あの頃はそんな概念すらなく、何度も両親にBSの契約をねだって断られていた。

幸いにも、先のアニメは住んでいる地域で鑑賞することができたので、録画用のVHSを用意し、毎週の放送を何度も繰り返し鑑賞した。しかし、いつしか、外出先でもそれを観たいという衝動に駆られるようになった。

とはいえ、さすがに、テレビやビデオデッキを持ち歩く訳にはいかない。当時の私が苦心の末に取った行動は、ポータブルMDプレイヤーのアナログ録音機能を使って、録画したアニメの音声のみを持ち歩くという方法であった。今考えれば失笑モノだが、当時の私は本気だったのだ。

映像は何度も観ていたので、音声だけで脳内再生ができる。むしろ、声優の演技や劇伴の演出は、音だけの方が深く味わえるのではないだろうか。そうして自分だけの価値観を見い出しながら、学校への登下校中を中心に、好きなアニメを耳で観ていた。

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DVDというメディアの手軽さ

やがて時は流れ、大学時代。どうしても欲しかったのが、ポータブルDVDプレイヤーである。メディアの覇権は、とっくにVHSからDVDに移り変わっていた。DVDを買えば、何度でも好きなアニメや映画を楽しむことができる。

しかしやはり、外出先でそれを観ることは容易ではない。悩んだ末に決心し、当時はまだそこそこの値が張ったポータブルDVDプレイヤーを、貯めこんだバイト代で購入。手に入れた時の、あの万能感は今でもよく覚えている。

プレイヤーとイヤホンさえあれば、どこでも好きな映像を楽しむことができるのだ。発売を待ちわびた映画のDVDを、買ってすぐ近くのベンチで再生し、好きなシーンのチャプターを選ぶ。間髪入れず、映像特典の鑑賞にもなだれ込む。そんな奇妙な生活を送っていた。

ビデオオンデマンドサービスの到来

更に時は過ぎ、ビデオオンデマンドサービスが本格的に登場。レンタルショップに行く度に複数枚のDVDを借りる生活を送っていたが、その身を動かさなくても、家に居ながら数え切れないほどの映画やアニメを観ることができる。

まさかそんな夢のようなサービスが登場するだなんて・・・。しかし黎明期の頃は、画質や容量の問題、価格帯も今ほど競争が激化していなく、そう簡単に手が出るものではなかった。

とはいえ、惹かれてしまったら止まらない。無事に契約を済ませ、そして、気づいたらタブレットまでも購入していた。スマホが爆発的に普及していたタイミングだったが、タブレットの方が画面サイズも大きく、しかもそれをベットやソファに寝転びながら楽しむことができる。なんと革命的なことだろう。

もちろん、出先でも同様だ。店舗でコーヒーを飲みながら、タブレットで映画を観る。昔スクリーンで観たSF映画のような、夢の生活であった。Wi-Fi環境を、まるで電灯に集まる虫のように探し回っていたのは、言うまでもない。

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動画配信の「なに」にお金を払うのか

今や、そこから更に技術が進み、動画を事前にダウンロードして鑑賞することも一般的になった。インターネットの環境がなくとも、つい先日放送された深夜アニメを外出先で観ることが可能になっている。あの頃、MDプレイヤーにアニメの音を録音していた私に教えてあげたくなるほど、「動画を観る」という環境は激変した。

また、テレビでビデオオンデマンドサービスを楽しむシステムも加速度的に普及した。そもそも、「テレビがインターネットと繋がっている」ことが驚きなのだ。テレビはテレビ、インターネットはパソコン。その垣根は、この十数年で一気に消滅していった。何気なくそういったデバイスに囲まれて生活しているが、一昔前と照らし合わせると、摩訶不思議なことである。

更には、アカウントで紐付けることで、デバイスをまたいで視聴状況を共有することもできる。さっきまでテレビで観ていたアニメの続きを、スマホで再生する。タブレットでウォッチリストに入れておいた映画を、ホームシアターで上映する。ここから更に十数年後、映像鑑賞は一体どのように進化していくのだろうか。もはや、想像が追いつかない。

もちろん、複数のビデオオンデマンドサービスに加入していると、「元を取れているのか」という疑問が残る。月額数百円のものから、1,000円を超えるものまで。気を抜くと、いつの間にか毎月数千円も支払ってしまっている。とはいえ、何よりも幸せなのは、「いつでもどこでも観られる」という状態そのものなのだ。その「状態維持」にこそ価値があり、極端な話、動画を観ていない時でも、「観られる」という状況に月額料金を支払っている。

我ながらかなり感覚が麻痺している自覚はあるが、MDに録音しなくて済む分、すこぶる幸せなのである。

結騎了

ゆうき・りょう。仕事と育児に追われながら「映画鑑賞」「ブログ更新」の時間を必死で捻出している一児の父。歳はアラサー、地方住まい。ブログを学生時代から書き続け、二度の移転を経ながら十数年継続中。現在は副業として営む。『週刊はてなブログ』『別冊映画秘宝 特撮秘宝』等に寄稿。

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