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ガッチガチのゲーマーが『FGO』というゲームを「新宿編」から忌憚なく評価する

初めまして。普段、ゲーマー日日新聞なるサイトで色々なゲームを分析したり批評しているJ1N1だ。

今回あるゲームを紹介したい。『Fate/Grand Order』、通称『FGO』と呼ばれている、『Fate』シリーズを原作としたRPGのゲームだ。モバイルでは知らぬ者はいない人気ゲームで、特にソーシャルゲームというカテゴリの中ではユーザー数や評価はトップクラスのアプリである。

おっと、そう怪訝な顔をしないで欲しい。「何が『FGO』を紹介したいだよ、お前自分のとこのブログで文句言ってただろ」と。認めよう。この作品は、まぁ明らかに不出来な面もある。戦闘は退屈だし、育成も面倒な割に工夫の余地がない、「周回」と言って同じことを何度も繰り返す前提だが操作が無駄に複雑、そして何より、ソシャゲ全般にも共通する「ガチャ」については極めてアコギな商売で、まず狙ったキャラクターは出ない。公式がそれをネタに開き直ってマンガを描いている程だ。

だが、私はある一点においてこの作品を評価している。それはまず、原作となった『Fate』と呼ばれる作品のユニヴァースを上手く拡張しつつ、部分的に見事なコンテクストの形成に成功している点、つまりストーリーが面白い点だ。

『FGO』の原作となっている『Fate/stay night』は、2004年にTYPE-MOONが発売したビジュアルノベルである。筆者にとっても思い入れのある作品で、この作品の醍醐味は何と言っても、「型月ワールド」と呼ばれる、原作者が構築した魔術と現代の混ざった独特の世界観に、バトルありロマンスありシリアスありの「伝奇活劇」が絶妙にマッチすることで、わかりやすくも奥深い王道のエンターテインメントに仕上がっているところだ。

中でも天才的な発明が、このシリーズ特有の「サーヴァント」と呼ばれるシステムだ。この世界では「聖杯戦争」と呼ばれる、魔術師同士のバトルロイヤルが行われていて、その時に魔術師はサーヴァントと呼ばれる使い魔を召喚できる。

で、このサーヴァントは、人類から尊敬され崇められているような、歴史上の偉人、伝説上の戦士、神話の神々(作中ではまとめて英霊と呼んでいる)などから選ばれる。そんな、いろいろな意味で最強と思われるサーヴァントを召喚してぶつかり合うのだ。(※ただし例外もある)

例えば『Fate/stay night』では、ブリトンのアーサー王と、ギリシア神話のヘーラクレースがバチバチに剣で戦ったりする。これは老若男女問わずロマンがくすぐられないだろうか。その上、サーヴァントと魔術師の人間関係、魔術師同士の対決等も相まって、物語はより複雑に、より奥深く、プレイヤーを聖杯戦争に引き込んでいく。

『Fate/Grand Order』に話を戻そう。
この作品は上述した「聖杯戦争」「サーヴァント」というシステムはそのままだが、原作のように他の魔術師と血も涙もない戦争をする作品ではない。(少なくとも1.5章まで)代わりに、本作では、過去から現在まで地球上に現れた「特異点」を修正することになる。

「特異点」では何者かによって、その時代や風土が狂わされた場所で、例えば第二特異点の古代ローマでは、歴代ローマ皇帝の「連合帝国」により侵略されていたり、第四特異点のロンドンは「魔霧」なるものが散布され、市民が外を出歩けなくなったりしている。

プレイヤーは、様々なサーヴァントと契約し、これら特異点に赴いて変化の原因を突き止めていく。その過程には、現地で出会うご当地サーヴァントとの友情や、逆に敵となるサーヴァントや人間との戦いが待っており、これらをもって本作は「ストーリーが面白い」と評価されている。

早い話、マーベル・スタジオの『アベンジャーズ』みたいな作品だ。普段は別の時代、場所で活躍した英霊たちが、「人類の驚異」という共通の敵を打倒するために集まり、主人公と共に戦うのである。

アーサー王も、ヘーラクレースも、ジャンヌ・ダルクも、宮本武蔵も、皆肩を並べて同じ仲間として、あなたのために力を貸してくれる。そのためのストーリーも書かれている。これはもう面白くなるしかないのである。中でも、私が好きなシナリオがある。1.5章「Epic of Remnant」と呼ばれる断章における、最初のシナリオ、「悪性隔絶魔境新宿」だ。

※以下、若干ながら「新宿」のネタバレが含まれるのでご了承頂きたい。

人類悪なる驚異から世界を救った1部での長い戦えを終えた主人公たち。だが数日して、もはや発生するはずのなかった、小さな特異点が発見される。場所は1999年の新宿。さっそく主人公が向かうと、記憶を失ったのだという、いかにも胡散臭い老人のサーヴァント、「新宿のアーチャー」に窮地を救われる。そして彼と、かつて戦った中であるアルトリア・オルタ、ジャンヌ・オルタらを迎え、この新宿を支配する「幻影魔人同盟」との戦いを開始する。

また、ヴィランが本当にカッコいいのも『FGO』の特徴だ。ヴィランとは、一般的には悪役という意味だ。しかしFGOのヴィランは少しニュアンスが変わる。ただの悪役ではないのだ。

例えば、中盤のヴィラン「新宿のアサシン」は飄々とした性格で人当たりが良いのだが、いざ戦闘となれば暗殺者として容赦ない性格を見せる、また追い詰めた最期には自分が生前主君に恵まれなかった事を告白しながらも、心の底でその男を守りきれなかった武人としての誇りを抱きながら退場する。単なる悪人でなく、様々な人間的な側面を覗かせることで、プレイヤーにも共感の余地を残す。『FGO』のサーヴァントが敵味方問わず愛されるのには、こうした理由がある。

その他にも、これまでにない「幻影魔人同盟」との激闘が始まる。だが、新宿編の敵である彼らは一様に、自分たちが原典となる物語や伝承で常に敗者の側であったこと、報われることがなかったことを背負って戦う。また『Fate』という物語を味わう上で、彼だけでなく、大半のサーヴァントは歴史や神話から再び現代に召喚された存在であり、我々の知る「物語」の彼らが、Fateという「物語」ではどのような運命を辿るのか、そのギャップを考えながら遊ぶと、より一層楽しめるだろう。

またこうした流れの中で、常にプレイヤーの期待を裏切るようなトリックが炸裂する。敵や味方に、騙し、騙され、翻弄されるのだ。

悪徳の廃都と化した新宿において、信じるに値するものは何もない。例えば、変装能力を持つ敵のアサシンに騙され拉致されるものの、それさえもアーチャーの術中にあり救出されるが、実はそれも敵の計画のうちだったという展開も。

こうした悪意は、1部の戦いでは中々見られないものだった。1部の戦いは過酷であったが、聖都における円卓の騎士との戦い(詳しくは6章を遊ぼう!)や、神代における神々との戦い(詳しくは7章を遊ぼう!)では、敵も味方も誇り高い英霊たちが呼び集められ、正々堂々と死闘を繰り広げた。だが新宿は違う。徹底した頭脳戦、そして計画犯罪。力だけでは解決しないミステリー的な駆け引きがプレイヤーを物語に引き込む。

無論、魅力的なキャラクターは敵だけではない。例えば廃都新宿における戦いのため、主人公と共に戦うサーヴァントは「アルトリア・ペンドラゴン<オルタ>」だ。アルトリア・ペンドラゴン<オルタ>は、6世紀初めに実在したといわれている、サクソン人の侵攻を撃退したという英雄アーサーが、サーヴァントとして召喚され反転された姿である。非情に徹し、勝利のため手段を問わない冷酷な王としての側面を持っている。

もう一人が、『FGO』における1部1章のラスボスとして登場した「ジャンヌ・ダルク<オルタ>」。かつて火刑に処された事で人間への報復を誓ったクラス「復讐者」として誕生した泡沫のサーヴァントだ。この2人と、後に登場する「名探偵」を加え、この完成された計画犯罪に挑む。先程述べたように『Fate』は偉大な武人や指導者と肩を並べて戦う、ロマンに満ちた伝奇活劇であり、『FGO』も同様の魅力があった。

だが、新宿編での仲間は、これまでのような誇り高き英霊と異なり、彼女たちは本来「敵」として描かれるべき悪の存在。だからこそ、目には目を、悪には悪を。悪徳の街と化した新宿では、彼女たちは誰よりも心強く感じられる。このような多様な物語の在り方を示したのも、「新宿編」の醍醐味である。

そして最終決戦。
何故新宿のアーチャーは記憶を失っていたのか、何故新宿はこのような廃都と化したのか、敵の真の目的とは何なのか、そして何より、何故彼らはここまで用意周到としか言い様のない、恐るべき計画犯罪を立案したのか……?

それらが一度に明らかになる終幕だ。物語における伏線が一気に回収されると同時に、彼らがそうまでして戦ってきた人間的な理由に強く共感するであろう瞬間にもなる。

───

影魔人同盟、そして「彼」は、物語の産物だった。物語の中で悪と定義されて以来、決して勝利することが許されず、その本質から敗北する運命にあった。彼らがどうしても勝利する上で必要だったもの、それがこの新宿であり、この新宿では主人公の側こそが敗北する運命にあるのだとしたら。

───

そして、そんな強敵に主人公たちは「どのようにして勝利する」のか。ここまで辿り着いたプレイヤーなら、その答えに驚愕すること間違いなしだ。

最後に、新宿編で一番好きなシーンを紹介させて欲しい。

真の黒幕との戦いの中、絶体絶命の瞬間に、「約束された勝利の剣」を解放するアルトリア・オルタ。原作では「敵」として立ちはだかる運命にあった彼女が、この新宿においては彼女こそが主人公の騎士として、世界を救おうと手を差し伸べる……。

原作における彼女は、主人公である衛宮士郎(えみや しろう)のサーヴァント「アルトリア」が反転した姿であった。本来は生真面目な少女騎士である彼女が、理由あって非情に徹した騎士王として士郎の前に立ちはだかる。しかし、その根底には衛宮士郎への信頼を持ち合わせていたが、サーヴァントとして最期まで敵として描かれていた。
その彼女が、次は『FGO』の世界で「あなた」という主人公のために剣を取るというのは、まさに原作ファンからすると涙せずにいられないシーンであり、最高のファンサービスだと考えている。

『Fate/Grand Order』は絶賛できるようなゲームでもないし、むしろ粗の方が目立つ作品である事は否定しない。だがこの作品における世界観と、それを編み込んだ物語は、他のモバイルゲームにはない重厚さがあり、それ故にファンが多いタイトルなのである。

そして何と言っても、こうしたストーリーを味わった直後に、SNS等を通じてファンと感想や考察を交わせるのは、ソーシャルゲームならではの楽しみ方だと思う。原作からとても癖の強い作品ではあったが、それらをリアルタイムで共有することで、気軽に楽しむ事もできるし、理解を深める事もできる。

また、物語は出来不出来が激しいものの、「新宿」に限らず優れたシナリオは他にも多数ある。個人的には「第六特異点 神聖円卓領域 キャメロット」、「第七特異点 絶対魔獣戦線 バビロニア」、「Lostbelt No.1 永久凍土帝国 アナスタシア」は是非じっくり読み込んで欲しい出来栄えだと思う。

何、もう楽しんだ? なら次は原作に触れるべきだ。『Fate』シリーズは2004年からずっと拡張され続け、その土台となった型月ユニバースはもっと奥深い。こうした傑作に触れるだけで何年も楽しめるだろう。

というかむしろ、今すぐ『Fate/stay night』を遊ぶべきだ。ゲームが億劫ならアニメでも構わない。今ならAmazon Primeで『Unlimited Blade Works』ルート編が無料で観れるし、原作の前日譚である『Fate/Zero』も無料で視聴できるぞ!

J1N1

独立ゲームメディア「ゲーマー日日新聞」を一人で書いてるジャーナリスト。どんなゲームでも口に入れてしまう雑食ゲーマー。ゲーム以外は芸術・観光・映画・読書等。

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