
夏真っ盛りの8月中旬。
甲子園では白熱した試合が日々繰り広げられていた一方、イカの世界では、2年ぶりとなる因縁の対決が実現。2つの陣営がアツく火花を散らしていた。
──そう、スプラトゥーン界における、第二次きのこたけのこ戦争である。
そもそも『スプラトゥーン』のフェスって?
ゲームを未プレイの人のなかにも、「フェス」の噂を聞き及んでいる人は多いかもしれない。Wii Uの『スプラトゥーン』時代からインターネット上で話題になり、Nintendo Switchの『スプラトゥーン2』でも引き続き開催されている、ゲーム中の一大イベント。それが「フェス」だ。
「フェス」は、プレイヤーが2つの陣営に分かれて戦うイベント。ゲーム内ではリアルの音楽フェスさながらに、ライブのようなお祭りのような、楽しげな雰囲気で街が彩られる。しかし同時に、ネット上ではアツい論戦(という名のお祭り騒ぎ)が繰り広げられることも少なくない。
というのも、フェスで出される「お題」として、しばしば争いを煽るよう(ネット的に盛り上がりそう)なテーマが設定されることがあるのだ。
「アクションvsコメディ」「花vs団子」「山の幸vs海の幸」といったお題で各陣営に分かれて戦い、最後には「まあ好みはいろいろだよね!」とにこやかに着地するのが、基本的なフェスのイメージ。たびたび行われる企業コラボの際にも、「ツナマヨネーズvs紅しゃけ(セブン-イレブン)」「ポテトvsナゲット(マクドナルド)」「アウターvsインナー(ユニクロ)」など、まあ「わかる」お題が多い気がする。
ところがどっこい。『スプラトゥーン2』では第1回フェスから「マヨネーズvsケチャップ」という、マヨラーとケチャラーの仁義なき戦いが繰り広げられる展開になった。第4回では何かと(ネタ的に)議論に挙がる「レモンかけるvsかけない」が争われるなど、いろいろな意味で「アツい」戦いが続いていたようにも見える。
そして今回、2018年8月18日~19日にかけて開催されたフェスのお題が、「アナタはどっち派? きのこの山 vs たけのこの里」である。
4半世紀以上にもわたって各所で紛争が起こり、数々のスナックを砕き、チョコを溶かしてきた、きのこたけのこ戦争。『スプラトゥーン』界においては2回目となる終わりなき争いの火蓋が、ついに切られることになったのだ。
「きのこ」と「たけのこ」の話をしよう
改めて説明するまでもない周知の事実ではありますが(※筆者調べ)、まずは「きのこ」と「たけのこ」の因縁について簡単に振り返ってみよう。
1975年に明治製菓から発売された「きのこの山」と、1979年に同社から発売された「たけのこの里」。「きのこ」と「たけのこ」という異なる出で立ちをしていながら、同じチョコスナックの仲間である両者は、当初は手を取り合い共存していたと言われている。
しかし他方で、昔からファンの間では、小規模ながら派閥戦争があったとも聞く。
言われてみれば少年時代、遊びに行った友達の家で、同行していた友人が「きのこの山」を目にするやいなや、「貴様ァ! 山の民かァ!」と激怒する場面に居合わせたことがあった。
言われた側の友達も黙っていられず、「そういうおめぇは里のモンだなぁ!?」と取っ組み合いを始めたため、「やめて! チョコのために争わないで! 勝負はスマブラでつけよう! な?」と諌めていたような記憶がある(※個人の体験であり、事実とは一部異なる描写があります)。
どちらもおいしい、おやつにぴったりのチョコスナックであることに変わりはないのに……。ぼくはかなしい……(コアラのマーチを頬張りながら)。
そして、インターネットが普及した21世紀。
きのこたけのこ戦争の戦火は拡大し、その争いはイカタコをも戦闘狂へと変えてしまったのだ。
──その点トッポってすげぇよな、最後までチョコたっぷりだもん。
たけのこ派が快哉を叫び、きのこ派が涙を呑んだ2年前
イカの世界にきのこたけのこ戦争が持ちこまれたのは、2016年のこと。2015年5月末に発売されたWii U専用ソフト『スプラトゥーン』が1周年を迎え、お祝いムードが漂っていた矢先のことだった。
フェスの開催が告げられた。
お題は「あなたはどっち派? きのこの山 vs たけのこの里」。
株式会社 明治様のご協力でお届けする。
期間は6月18日(土)9:00~6月19日(日)9:00。
この戦いに、キミの手で決着をつけよう。 pic.twitter.com/s6L9nsuFUR— Splatoon(スプラトゥーン) (@SplatoonJP) June 10, 2016
そうなのだ。
何がヤバいって、これは「公式コラボ」なのだ。
明治様がお認めになった、正式な決闘なのである。
チョコスナック同士の戦い……これは、血糖値の上昇は避けられない。決闘だけに。
結果だけを見れば、第一次スプラトゥーンきのこたけのこ戦争は、「たけのこの里」の勝利に終わった。
ただし、得票率では大きく「きのこの山」を上回ったものの、勝率では劣勢。たけのこ派の物量で勝つことはできたが、ゲーム中の成績ではきのこ派が優勢だったということになる。言わば「試合に勝って勝負に負けた」格好であり、辛くも勝ち取った結果だと言えるだろう。
──あれから2年。
Wii UからSwitchへと舞台を移した2018年、ついに山の民の逆襲が始まる。
そして、山の民の逆襲が始まる
2017年7月に発売となった、Nintendo Switch専用ソフト『スプラトゥーン2』。やはり発売1周年を迎えたこのタイミングで、きのことたけのこは再び激突することとなった。
来る8月18日~8月19日、「アナタはどっち派? きのこの山 vs たけのこの里」フェスが開催されることが決定した!
「きのこの山たけのこの里国民総選挙2018」の投票は終了したようだが、フェスでの決着はこれからだ!
「スプラトゥーン2」での投票は8月11日から。
今しばらくお待ちいただきたい! pic.twitter.com/wYGEbG3Mf6— Splatoon(スプラトゥーン) (@SplatoonJP) August 3, 2018
幾度、繰り返せば気が済むのだろうか……。
どれだけ争っても、答えが出るわけではない。
だが、闘わずにはいられないのだ。
なぜなら、今回のお題は「きのこの山 vs たけのこの里」。
己の信念を曲げることなどできるものか!
いざ、投票だ! pic.twitter.com/qHH5nmnPgZ— Splatoon(スプラトゥーン) (@SplatoonJP) August 13, 2018
第一次きのこたけのこ戦争の雪辱を果たすべく燃えるきのこ派と、ここで連勝することでイカ世界での地位を盤石にしたいたけのこ派。前回の結果を見るかぎり、「得票率では『里』が有利か……?」と囁かれていたものの、油断はできない。
『スプラトゥーン2』ではフェスの集計方法が前作と変わっており、ソロとチーム、両方の勝率が高ければ、それで勝利が確定するのだ。事実、過去のフェスの結果を見ても、「得票率では勝っていても、ソロ&チームの両方の勝率で負けた」というケースが少なくないことがわかる。
そして迎えた、8月18日午後3時。
ついに戦いが始まった。
2年前と同様に、今回も「里」側で参戦した自分。正直に言って、最近は某「超高速で建造物を組み上げ縦横無尽に飛び跳ねながら戦う100人規模のバトルロイヤルTPS」にハマっていたこともあり、『スプラトゥーン』の操作がお留守になっているんじゃないか……という懸念はあった。
しかし、ひとたびコントローラーを握れば、まったく無問題。最初はローラーで慣らしつつ、ちょくちょくブキを変え、時に前線に突っこみ、時にサポート&塗りに徹し、それなりに勝利に貢献できたんじゃないかと思う。今回のミステリーゾーン、扉のギミックがおもしろかったですよね。
終わってみれば、「えいえんのたけのこの里ボーイ」になるまでの戦績は、20勝12敗。
普段はガチマッチのA〜S帯をふらふらしているような自分としては、意外と悪くない勝率なのではなかろうか。「これは勝ち確なのでは……?」とたけのこの里(クッキー&バニラ)を頬張りながら、ニコニコと結果を待っていた。
……がしかし、やはり現実はたけのこのように甘くなく。
山の民の猛攻は里の守りを貫き、僅差ながら、確実な勝利を手にしていた。
フェス「アナタはどっち派? きのこの山 vs たけのこの里」結果
- 得票率──39.87%:60.13%
- ソロ勝率──50.28%:49.72%
- チーム勝率──50.21%:49.79%
第二次きのこたけのこ戦争は、「きのこの山」が雪辱を果たす結果に終わった。
山の民は完全復活を遂げ、世界の均衡は保たれた──と言ってもいいのかもしれない。
たしかに、チョコバナナ味もおいしかったものね……。
雌雄を決する日は来るのか
──フェスは終わった。
しかし、きのことたけのこの戦いはまだ終わっていない。
来るべき第三次スプラトゥーンきのこたけのこ戦争に備えるのはもちろんのこと、直近では「きのこの山・たけのこの里 国民総選挙2018」の結果発表もある。得票率ではたけのこ党が若干は有利なようだが、此度のフェスのような結果になるとも限らない。最後まで油断は禁物だ。
きのこの山・たけのこの里 国民総選挙2018|株式会社 明治より
何はともあれ、戦いだなんだとは言っても、これは一種の「お祭り」だ。
きのこもたけのこもひっくるめた、みんなが大好きな「里山」への愛を語る、祭りの場。うっかり愛が暴走して、少しは過激なことも言ってしまうかもしれない。でも、甘くておいしいチョコスナックを口にすれば、次の瞬間にはみんなが笑顔になっている。そんな素敵な空間が、そこにはあった。
大人になっても変わらない味があり、楽しく食べられるお菓子がある。
──今はただ、その当たり前の幸せを享受しよう。
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けいろー
フリーライター。ネットカルチ ャーを愛するゆとり世代。趣味で始めたブログ『ぐるりみち。』を経由して仕事をもらえるようになり、ノリと勢いで独立。本・グルメ・街歩き・旅行・ネット・アニメなどに関心あり。執筆実績として『HATSUNE MIKU EXPO 2016 Japan Tour』公式パンフレットなど。バーチャルな存在になりたい。